1892年にアメリカで発行された、シャーロット・パーキンス・ギルマンによる、フェミニズム小説『黄色い壁紙』のブックデザインを行いました。
この作品は、著者であるギルマンの、実体験から着想を得た小説です。そのため、本文の文字は、ギルマンの直筆に似たフォントを使用したいと考えました。
彼女の直筆が確認できる資料が、ハーバード大学のウェブ図書館で公開されており、その資料を参考に文字を再現していきました。まずは膨大な数のフォントの中から、彼女の直筆により近いフォントを選び、縦横の比率や字間を調整していくことで、より直筆に近いフォントへと変化させていきました。そうして調整したフォントを用いて本文を組んだあと、紙に出力し、トレースしていきました。このトレース作業の際に、調整した既存のフォントでは表現することができなかった、彼女の直筆の中で特に特徴的な、「t」「tt」「of」の文字を、彼女自身の書き方に倣いながら書き換えていきました。
一見何の変哲もないよく見る上製本に見えますが、このようなフォントの秘密の他にも、作品をより楽しめるたくさんの魅力を込めています。
I designed a book “The Yellow Wallpaper” which is a feminism novel in America published in 1892 written by Charlotte Perkins Gilman.
This novel was inspired by the author’s real experience, so I decided to try to make the letters look like her handwritten letters.  
First, fortunately, I could find a picture of her original writing on the web library of Harvard University. Then, I picked up a font which is similar to her handwritten letters, and tried to make it more similar by flattening and leaving appropriate space between characters. I typeset the body text by using the converted font and printed. After that, I traced it by hand adding some of her writing features, “t”, ”tt” and “of”. 
This book may looks so ordinary but there are so many other attractiveness in it.
主人公が壁紙と同化していく描写を、タイトルが本の表紙に溶け込むような色使いで表現しています。
「壁紙の中にいたのは自分だった」という、作中に出てくる表裏一体性を、表表紙と裏表紙に変化を加えることで表現しています。
ギルマンの書き癖が顕著に現れる「of」を本文から抽出しています。
「of」部分だけ、ギルマンの直筆を真似つつトレースしていきました。
印刷効率を考慮し、タイトル部分は白抜きにし、黄色い紙に印刷しています。
内容がやや重たいものなので、上製本で仕上げることで重厚感を演出しました。
主人公である筆者が、だんだんと壁紙の中へ消えていってしまうのを表現するため、英文がだんだんと薄くなり、最終的に背景の模様の向こうに隠れるようにデザインしました。
「壁紙の檻の中に誰かがいる」という、作品を通してずっと出てくる話題を仕掛けとして盛り込みました。PETシートで空洞部分を挟むことで、本を触っても仕掛けには気づかないような作りになっています。

本の最後に、ギルマンについてや、作品が社会に与えた影響などについてまとめました。

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